海上自衛隊最大の艦艇「いずも」を取材してみた!|海上自衛隊 part.1

「いずも」のデッキから その他
「いずも」のデッキから

 普段は神奈川県横須賀市を母港とする、日本最大の護衛艦「いずも」。2024年7月、名前の由来である島根県出雲市の大社漁港沖に錨泊びょうはくした。「いずも」は巨大すぎるために、出雲市沿岸に接岸することができないのだ。

 出雲市沖に来た「いずも」では、教育訓練や乗員の休養、依頼に基づいた広報が行われる。平成30年以来の6年ぶりの錨泊である。錨泊1日目は県知事などが艦艇を視察した。

 今回の取材は、「いずも」内部を取材した記事、広報官の竹下さんに「自衛隊で働くこと」について伺った記事(のちほど掲載)の2本立てでお送りする。

「いずも」とは

 艦艇「いずも」は、全長248mのヘリコプター搭載護衛艦(DDH)。9年前に就航した、海上自衛隊最大の艦隊だ。艦艇の規模を表す排水量は19500トン。とにかく途方もない大きさだ。

 甲板(艦艇の上部 デッキのようなもの)では5機のヘリコプターが離着陸でき、格納庫には9機のヘリコプターを格納できる。

 DDHの名称は神話にゆかりのある地名から名付けられる。そのため「いずも」のほかに「ひゅうが」や「いせ」「かが」がある。

「いずも」に取材!!

乗船!!

 大社漁港から沖に浮かぶ「いずも」まで、「いずも」の作業艇で向かう。

自衛隊の公用車
送迎してくださった際に乗車した、自衛隊の公用車。ナンバープレートがなんだか物々しい。
「いずも」の作業船
艦艇「いずも」に向かうための作業船。(大社漁港)

 

格納庫

 はしごのような階段で、作業艇から「いずも」に乗り移る。作業艇から見上げる「いずも」は、もはや船ではなく反り立つ崖だ。

下から見上げたいずも
作業船から見上げた「いずも」。

 「いずも」に乗り移ってすぐ、ヘリコプターを収納する格納庫があらわれる。全長150mもあり、9機のヘリコプターが収納できる。「いずも」は大きすぎるため揺れも感じられず、ここが海の上であることが疑わしくなるほどだ。ここのヘリコプターはみなローターを畳み、コンパクトになっている。

格納庫
格納庫
ヘリコプター
格納庫のヘリコプター。

 格納庫の末端にある巨大なエレベーターで、ビル4階分の高さを上ると、いよいよヘリコプターが離発着する甲板(デッキ)だ。

エレベーター
格納庫と甲板を結ぶエレベーター。

甲板(デッキ)

 エレベーターが甲板に達すると、視界がひらけて沖の風が心地いい。

甲板
甲板の景色。とんでもなく広い。

 全長約250mの超巨大な甲板では、5機のヘリコプターが離着陸を行うことができる。

 甲板の表面には無数のくぼみがある。このくぼみはヘリをロープでつなぎ固定するためのもので、甲板のどこにでも離着陸できるように全面に存在している。

くぼみ
ヘリをロープで固定するための無数のくぼみ。

艦橋(ブリッジ)

 甲板の上にある大きな構造物が「艦橋(ブリッジ)」だ。この中で「いずも」の指揮や操縦が行われる。

艦橋
艦橋(ブリッジ)

 右前の緑の椅子は艦長席。この席は艦長以外の自衛官は座ることを許されないようだが、今回はどっかりと座らせていただいた。艦長席の反対にも椅子があるが、こちらは艦長よりも目上の方が乗艦したときのための席だ。

航海指揮官の座
航海指揮官の座。
舵
舵。電動なので軽い力で回せる。

 艦長の監督のもと、前方の航海指揮官が指示を出す。その指示に従い、後方にいる操縦士が艦艇を動かす。航海指揮官は方位盤で方位を測る。艦艇内のほとんどのシステムが電子化される中、方位が今もアナログのままであるのは、万が一電気が止まっても方位が分からなくてはならないほど極めて重要だからだ。

航空管制室(LSO)

 甲板で5機のヘリコプターが離着陸できる「いずも」だが、同時に離着陸を行うと機体同士が接触する恐れがある。そこで、ヘリコプターが接触しないよう交通誘導の役目を果たすのが、この航空管制室(LSO)だ。

LSO

 LSOで働く航空管制官は、空港の管制塔で働く航空管制官と同じ資格が必要だ。しかし、資格は自衛隊に入隊後、自衛隊の教育機関で取得することができる。

 ヘリコプターが着陸する流れは以下の通りだ。まず、320km先まで感知できるレーダーで位置を把握しながら、着陸するヘリコプターを誘導する。10マイルの距離まで誘導できたら、こんどはSCAが、ヘリコプターが適正なラインに乗りながら艦艇に接近するよう指示を出す。最終的には肉眼でヘリコプターの着陸を指示する。

レーダー
ヘリコプターの位置を把握するためのレーダー。

医務室

 「いずも」には35床のベッドや手術室、陰圧室等を備えた医務室がある。これほど整った設備を有するのには理由がある。有事の際などに負傷や発病をした隊員は、「いずも」の医務室で応急的な治療を受けた後、本土に戻ったときに本格的な治療を受ける。「いずも」は隊員の治療の中で中継的な役割を担っているのだ。

医務室のベッド
医務室のベッド。
手術室のプレート
「いずも」内に手術室が!!
手術室内
手術室内

 気圧が他の船内よりも低くなっている陰圧室。感染症が発生したとき、空気が循環している船内ではとても蔓延しやすい。そこで気圧を低くした陰圧室で感染者を治療することにより、病原体が陰圧室の外に広がることを防ぐ。

陰圧室内のベッド
陰圧室のベッド。

「いずもミュージアム」

 艦艇内には「いずも」にまつわる写真や記念品などが詰まった、通称「いずもミュージアム」がある。

 もともと倉庫として設けられた部屋を、このようにミュージアムとして改装したのだ。ミュージアムはこの錨泊のために設営されたものではなく、常にこのような物品が揃えられている。

麻生太郎氏、中谷元氏(当時の防衛大臣)、安倍晋三氏のサイン
左から麻生太郎氏、中谷元氏(当時の防衛大臣)、安倍晋三氏のサイン。

 ミュージアムの中央に「いずも」と彫られた木の板がある。これは出雲大社にあった70年前の木材を、出雲大社の宮司さんから譲り受けたものだ。

木彫り「いずも」
「いずも」と彫られた板。

「いずも」艦長にインタビュー

石寺艦長にインタビュー
石丸艦長にインタビュー!
艦長・新聞部・いずも
艦長と記念撮影。

 最後に、石寺隆彦艦長と記念撮影。300人を超える隊員を取りまとめる石寺艦長。仕事をする上で大事にしていることを伺った。

 「もちろん隊員も人間なので、隊員のやる気のケアを大事にしています。隊員が仕事をする時間と休む時間を管理し、メリハリをつけることで士気を保ちます。(石寺艦長)」

さいごに

「いずも」から作業船で漁港に戻る。

 取材中は、ここが海上自衛隊の艦艇であることを忘れかけるほど和やかな雰囲気で、「いずも」を見て回り自衛官のお話を伺った。そんな中でふとしたときに「今、日本の国防の最先端を覗いている!」と気づかされることも少なくなかった。

 今回、島根中央高校新聞部が護衛艦「いずも」を取材できたのは、自衛隊島根地方協力本部の広報官として、島根中央高校の進路相談会にいらっしゃった竹下英志さんにご縁があったためだ。貴重な機会を下さった竹下さんや自衛隊の皆様に感謝を申し上げたい。

 part2では、広報官を務める竹下英志さんに、海上自衛隊で働くことについて伺ったお話をまとめている。のちほど掲載する予定なので、そちらもぜひご覧いただきたい。

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